東京の自由学園のみなさんからの質問に答える3回シリーズの2回目です。
(1回目はこちら)
目次
▶Q. 日本は物の消費をすることによって経済を回しているように見えますが、そのせいでごみが増えているのでしょうか? 方向を転換するにはどのような方法があるのでしょうか?
A. そのとおり、物の消費が増えれば、それはそのままごみの増加につながります。特に問題なのが使い捨て。ここ50年の大量生産・大量消費の傾向は、本当に見直していく必要があります。まずは、使い過ぎを減らすこと(大幅に!)。そして、大切に使うこと。それに加えて、よりリユース、リサイクル、コンポストがしやすい物を利用していくことが、転換につながると思います。これは国の法規制のレベルでもどんどん転換が進んでほしい部分ですが、それを後押しするのは私たち市民(結局のところ、大量生産・大量消費をしているのは私たち市民であって、政府ではないですからね…)。個人にできることは限られているようにも思えますが、暮らしを転換する人が増えれば増えるほど、社会の転換は加速度的に進んでいくと思います。
▶Q. 服部さんのおすすめの本やインターネット、施設等を教えてください。
A. よい本がどんどん出ています。枝廣淳子さんの『プラスチック汚染とは何か』は、ものすごくよくまとまっていて、わずか85ページの薄いブックレットですので、ちょっと難しいと感じるかもしれませんが、みなさんにもぜひ読んでみていただきたいです。中嶋亮太さんの『海洋プラスチック汚染』も、とてもわかりやすく、最新の研究の動向なども踏まえられていて、おすすめです。中嶋さんと古賀陽子さんが運営されている人気ウェブサイト「プラなし生活」もとてもたのしいサイトですので、ぜひ見てみてください。もちろん、拙訳『プラスチック・フリー生活』と、拙ブログ「サステイナブルに暮らしたい」もぜひご覧ください! あとは、ぜひ英語を勉強してください。環境関連の情報は、日本語よりも英語の方が圧倒的に情報が充実しています。世界がぐんと広がります。
施設やお店は、ここ1~2年、どんどんプラスチックフリーを掲げる新しいお店が誕生しています。インターネットやSNS(インスタグラムなど)で「プラスチックフリー」「プラスチックフリー生活」などのキーワードで検索してみると、そういう新しいお店の情報がたくさん見つかります。近所でも、パン屋さん、肉屋さんなどの個人商店では、マイ容器持参でプラスチックフリーの買い物ができますよ。
▶Q. もし、これから世界中の人間全員がプラスチックを減らそうと努力したら、どのくらい減っていくのですか?
A. それはもう、信じられないくらい減るはずです!! すぐに3割以下に減るのではないでしょうか? 一方、自動車のタイヤとか、衛生的な使い捨てが求められる医療用品など、産業レベルでの転換が求められる部分もあります。一般の消費者と、産業レベルでの改革の両輪がそろえば、これは向かうところ敵なしのはずです。
▶Q. レジ袋をやめてもプラスチックごみの削減にはあまり効果がないという意見も目にしますが、服部さんはどうお感じになっていますか?
A. レジ袋はプラごみのほんの一部で、レジ袋が減ってもプラごみが大幅に減るわけではないというのは事実です。一方で、レジ袋はいちばん簡単に減らせるプラごみのひとつです。つまり、レジ袋を減らせずに、ほかのプラごみを減らせるわけがありません。そういう意味で、レジ袋削減は、プラごみ削減の「スタート地点」であって、「ゴール」ではありません。ここを通過して、やっとその先へ進むことが可能になる、という意味で、レジ袋削減は絶対に必要だと僕は思っています。「効果がない」と文句を言っている人は、そのほかのごみも減らす気がないのではないでしょうか?
▶Q. プラスチックを体内に入れることで具体的にどのような症状が起こるのですか?
A. プラスチックには様々な化学物質が添加剤として含まれており、これらの添加剤に発がん性や内分泌かく乱作用などが指摘されています。プラスチックを食べたり飲みこんだりしても(実際、化繊の埃などが空気中に舞っているので、こうして普通にしているだけで私たちは常時プラスチックの微粒子を吸い込んでいます。現代人は毎週クレジットカード1枚分のプラを摂取しているという情報も!)、まずは人体の排出作用で外に排出されるそうです。なので、可哀想なウミドリたちのようにお腹にどんどんプラがたまって窒息してしまうということはないらしいのですが、添加剤の有害な成分は脂肪吸収されるという指摘もあります。なので、プラの「本体」が排出されたからと言って、安心はできません。量的にはごく微量ですので、脂肪吸収されたからと言って、来年すぐに病気になるとかそういう話ではありません。でも、むしろ、長期的に蓄積されていくことによって、発達や生殖などに重大な影響が及ぶ危険性が指摘されています。
▶Q. 小さい子どもも環境について関心を持てるようにするにはどうしたらいいのでしょうか?
A. いろいろよい方法があると思います。いちばんおすすめなのは、海岸でのごみ拾いです。驚くほどごみがあって、子どもでも十分に貢献でき、その意味を理解できます。インパクトは絶大です。海でなくても、その辺の道路沿いや公園でもよいでしょう。その他、エコの心が育ちそうな絵本を一緒に読んでみる(『わたしは樹だ』『わたしのせいじゃない』『じゅんびはいいかい?』『あなたが世界を変える日』『世界がもし100人の村だったら』などがパッと思いつきました)、家庭での手作りやDIYをたのしむ(保存食づくりなどのほか、洗剤づくりや家具の修理、繕いものなど)、社会派の映画を観る、社会問題を家庭の会話の話題にする、などをわが家は意識してやっています(うまく作用していると断言しているわけではありませんが!)。
▶Q. 現状だと多少の人しか買い物袋を持ってこないと思います。無理やり変えようとしても大変です。ですがある程度の食品や物などを紙袋に入れていくことができるのではないかと思います。ですがまた、紙袋の使い過ぎで環境汚染につながりますが、服部さんはどのようにお考えでしょうか?
A. まずはとにかく、「できる人がやる」が大切だと思います。無理やり変えることはできませんし、たとえば、病気だったり、介護で忙しかったり、本当に余裕のない苦しい状態にある方までもが、無理を押してまでレジ袋をゼロにする必要もないと思います(結局のところ、レジ袋はプラごみのほんの一部でしかないので、レジ袋をゼロにしたところで、プラごみ全体から見れば、その効果は大したことはない)。レジ袋が有料になれば、お金を払いたくない人は買い物袋を持参するでしょうから、そうやって“全体として”削減が進むことが大切かなと思います。紙袋はプラ袋よりはいいのかなと思いつつ、やはり使い過ぎは森林伐採にもつながりますし、紙の製造や流通にもエネルギーがかかります。とにかく「無駄には使わない」ことがいちばんの正解で、「できるのにやっていない」人たちが「やる!」ことが大事だと思います。
▶Q. プラスチックは完全に消えないとおっしゃっていましたが、リサイクル以外にどのような物質に変えることが可能でしょうか?
A. ええと、プラスチックが自然界で完全に分解するまでに、どんなに短くても数十年~数百年以上かかると言われる問題ですよね。より分解しやすいタイプの生分解プラスチックへの転換は進んでいってほしいところです。特に医療や介護などの分野では、どうしてもプラスチック的な素材の必要性はあると思うので、そういう部分がクリアできるような「より安心な素材」が登場してほしいですね。
~3回目につづく~