ネット通販の緩衝材。「ワレモノでもないのに、ご丁寧にびっしり気泡緩衝材(プチプチ)にくるまれて・・・」というパターン、残念ながら多発しますよね。
「そもそも論」を言えば、輸送のエネルギーを使う通販は、できる限り避けるのがベストかもしれません。でも、ローカルでは手に入らないものもたくさんあります。特に、オーガニック、フェアトレード、プラスチックフリーなどの商品は、まだまだ買う人の絶対数が少ないので、通販に頼らなければマーケットが成り立たないものも多いはず。そんな中、「通販を利用せずに地元で従来型の商品ばかりを買い続ける」のではなく、自分が「価値ある」と感じる商品を通販で購入することで、日々の暮らしを一歩前に進め、微力ながら「良質な商品のマーケット拡大に寄与する」ことを僕は選びたいと思っています。
とは言え・・・通販の緩衝材には我慢なりません。小包を開けて、①どう考えても不要な緩衝材を目にする精神的ストレス、②大量の緩衝材を商品から引き剥がす屈辱的労力、③かさばる緩衝材をプラごみとして保管する空間的損失、④それを有料指定袋に入れてごみ出ししなければならない不条理 ――
ワレモノや家電ならまだわかるとして、そうでない緩衝材は本当に許せない! ということで、数年前、ふと思いついて、ささやかなアクションを始めたのです。効果は絶大。緩衝材の8割をラクラクシャットアウトできました。その秘策は・・・
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▶備考欄に記入するだけ!
もったいぶってすみません。あまりに簡単で拍子抜けするほどなのですが、ネット通販の注文ボタンを押す直前、備考欄に以下の数行を書き入れるようにしたのです。
「ごみを減らしたいので、気泡緩衝材等は一切入れないでください。破損のクレームはつけません。地球環境のため、ごみ出しの手間軽減のため、できる限り簡易包装でお願いいたします。納品書類も、封筒やプラスチックパックに入れず、そのまま入れてください。ぬれたり折れたりしてもかまいません。」
これだけで、8割のお店はすんなり緩衝材を入れずに送ってくれるようになりました。本当に簡単です。この文言を、馬鹿の一つ覚えのようにカットアンドペーストで毎回備考欄に書き入れるだけ!
↓こちらは、以前、ドライフルーツやナッツなど、「ワレモノでもない商品」をすべて気泡緩衝材でグルグル巻きにして送ってくれていたお店。上記の文言を備考欄に書くようにしたら、毎回こんなふうに届くようになりました。
このお店の株、一気に天まで上昇です!! 何がうれしいって、箱の開封の手間が激減です。商品をそのまま取り出して、棚にしまうだけ。
本音を言えば、この「商品を固定するための段ボール」も不要です。でも、現代社会の中では「これがいいバランスかな」と感じています。大多数のお店にとって、いきなり「箱の中で商品がゴロンゴロン」という状態に移行するのはきっとハードルが高いのでしょう。それを思えば、この「段ボール1枚で固定」は、「ちょうどよい妥協点」というか、ほかのお店にとっても、よいお手本となる気がします。
↓こちらのお店には、子ども用のリュックサックを注文。「濡れても汚れても、洗いますので、なるべく簡易包装でお願いします」と書いてみたところ、このとおり。
紙1枚でくるんだだけの「究極のミニマル」で送ってくれました。こんな時は、気持ちが伝わった気がして、本当にうれしくなります。「書いてよかった」と思いますし、その意を汲んでくれたお店に感謝の念が湧きます。これまでの経験上、概して「よい商品」を売っているお店ほど、こうしたリクエストに前向きに応じてくれる気がします。
▶簡易包装はお店にとっても都合がいい
「簡易包装のリクエスト」はまだまだ一般的ではないので、お店の梱包作業の流れを妨げてしまいそうで「気が引ける」と感じる方もいるでしょう。
でも、簡易包装は、本来はお店にとっても都合のいい話。だって、緩衝材は「ただ」ではないのです。お店は緩衝材をわざわざ購入して梱包しています。しかも、緩衝材は勝手に商品に巻きつくわけではありません。そこには手間と人件費がかかっているのです。目的はただひとつ――「お客様から文句が出ないように」「丁寧な梱包だと満足していただけるように」。
だからこそ、「そんなことに手間をかけないでください」とお店を安心させてあげましょう。「全然気にしませんから」「むしろ簡易包装の方がうれしいですから」「安心して緩衝材を省いてください」という気持ちをお店に伝えるのです。
みんなが黙っていたら、この気持ちはお店に伝わりません。これほど多くの人が「緩衝材って無駄…」と思っていても、お店にその気持ちが伝わらなければ、お店はいつまで経っても「お客様に満足していただけるように/商品の状態に万全を期すために」過剰包装をし続けることになります。
ここはぜひ声をあげ、責任ある消費者として、ささやかな変化のウェーブを起こしましょう。遠慮は要りません。だって、「贈答品用の過剰包装のリクエスト」はみなさん臆せずにしているのですから。「過剰包装のリクエスト」が良くて、「簡易包装のリクエスト」がいけないはずがありません。単に「慣れ」の問題。最初はお店も慣れていなくてアタフタするかもしれませんが、より多くの人がリクエストすれば、次第に慣れてくれるはず。この環境危機を思えば、慣れてもらわなければ困ります。
経験上、8割のお店はすんなり簡易包装のリクエストを受け入れてくれます。自分を「特別なリクエストをするうるさい客」と思わず、「お店の負担を(長期的に)減らしてあげる良心的な客」と位置づけて、簡易包装をリクエストしましょう。
▶中には応じてくれない店も・・・
「8割のお店はすんなり応じてくれる」ということは、つまり、応じてくれないお店も2割ほどあります。
その筆頭格が某大手通販サイト。インクカートリッジひとつでもこの頑丈な梱包です(※わが家はこの後、インクカートリッジが必要ないプリンターに乗り換えました。その話もまた後日…)。
このサイトは、性質の悪いことに、注文時の「備考欄」がなく、問い合わせ窓口も公開されていません。つまり、余計なリクエストを受け付けないように設定されているのです。ただし、同じサイトの中で、「マーケットプレイス」など別の出品者が発送する商品を購入した場合は、注文完了後に「注文履歴」のページから「出品者に連絡する」ことが可能です。この形なら、ひと手間かかりますが、簡易包装をリクエストすることができます。
オーガニック系のみなさんに大人気のiherbも、「備考欄」がない数少ないお店のひとつです。しかも緩衝材はいつもガッチリ。良質な商品を多く取り扱うありがたいお店だけに痛恨・・・。何とか改善してほしくて、カストマーセンターに2度ほど意見メールを書いてみましたが(アメリカのお店なので英語で)、やんわりと「善処メール」が返ってきただけで、今のところ改善の兆しはありません。
この2つ以外には、わが家が定期的に買い物をするお店で緩衝材がシャットアウトできないところはほぼありませんが、一部、シャットアウトに「多少のやり取り」が必要だったお店もあります。
たとえばこのお店。今はこのとおり、バターをさわやかに「ダイレクト梱包」してくれていますが・・・
以前は、8個のバターをひとつずつ気泡緩衝材にくるみ、剥がすのも大変なほど粘着テープで固定して、さらに上部に大きな気泡緩衝材をふわりと詰めて、送ってくれていました。しかも、僕が「備考欄」に例の文言を書き入れたところ、「商品の状態に万全を期すため、できる範囲での対応となることをあらかじめご了承ください」という牽制メールがすぐに届き、何と「気泡緩衝材バッチリ」のまま送られてきたのです。オーマイ!
もちろん、最終的には「お店の自由」と言えば、「お店の自由」です。嫌なら買わなければよい話。でも、「このご時世にこの後ろ向きな姿勢は…」ということで、お客様窓口に電話をかけました。そして切々と訴えました ―― 昨今のプラ問題を受け、気泡緩衝材を減らしたいと心から願っていること。破損のクレームはつけないと書いているのに突っぱねられて悲しいこと。そちらは万全を期す「サービス」のつもりかもしれないが、消費者アンケートでも「気泡緩衝材の入れ過ぎ」を 不便と感じる客が多いこと。ほかのほとんどのお店は簡易包装のリクエストに簡単に応じてくれること。時代は変わりつつあるのに、すばらしき商品を取り扱っている貴店がその流れに乗らないと時代遅れになってしまうので心配であること(超余計なお世話ですが…)。これらの思いを、切々と、モンスターにならないように丁寧に丁寧に訴えました(ま、電話かけている時点で十分モンスターかもしれませんが・・・しかも思いがあふれ過ぎて、ところどころ声が上ずってしまったかもしれない)。
効果はありました。「今後、服部様の梱包には店長の私が立ち会って万全を期します」と、こちらのつもりとはちょっと違う展開になってしまったのは残念でしたが(「万全を期して簡易包装」ってギャグみたいですが…)、しかもプレッシャーを感じさせてしまったのは申し訳ないなとは思いますが(別に感じてくれなくてもよかったのですが…)、その後の改善を思えば、「やらないわけにはいかなかった」と思っています。
逆に、気持ちを伝えたことで「すごくよろこばれた」ケースもあります。わが家が長年お世話になってきた油屋さん。プラスチック製の注ぎ口がセットについているのですが、毎回捨てて新しいのを使うのがもったいなくて、何回か使い回していると、未使用の注ぎ口がどんどん手元に余ってしまいます。恐る恐る「つけないで送っていただくことはできないでしょうか?」と相談してみたら、「そんなふうに言ってくださってうれしいです。実は私たちももったいないと思っていたのですが、つけないわけにはいかないと思っていたのです。つけないで済む分、〇円引きにいたします」と、予想外の割り引きまでしていただけるようになりました。
このように、お店の反応はいろいろです。とにかく「相手あってのこと」ですから、常に思い通りになるわけではないですが、時にはうれしいやり取りも生まれます。そんなやり取りをたのしむ気持ちで、ぜひトライしてみてください。
▶ワレモノはどうする?
さて、普通の商品に気泡緩衝材が不要なのは当たり前として、「ワレモノ」はどうすればいいでしょう?
実は、ワレモノでさえ、気泡緩衝材は必須ではありません。たとえばこのお店は、↓こんなふうに段ボールで瓶をガードして送ってくれます。なるほど!
↓これはドイツの「ウェック」の保存瓶をまとめ買いしたとき。(※このウェックもすばらしいので、また後日紹介します。)
↓こちらは友人からの小包。
つくづく、「ワレモノには気泡緩衝材」って、単なる思い込みなのです。
とは言え、こういう「発想の転換」をお店に強要するわけにはいかないかな、と思います。破損の可能性がリアルにある以上、お店にリスクを取らせるのは申し訳ない、ということで、わが家はワレモノや家電などについては、①なるべく通販に頼らずに近場で購入する、②通販で購入することを選ぶ場合は“できる範囲で簡易包装してください”とマイルドな文言にとどめる、そして、③結果としての過剰包装は受け入れる、という形を取っています。
▶自分が送る側に立つ時も・・・
「客としてお店にリクエストする」ことばかり書いてきましたが、もちろん自分自身が「送る側」に立つときも話は同じ。宅配便/手渡し問わず、贈り物の緩衝材は常に必要最低限を心がけたいものです。「できる工夫」を簡単にまとめてみます。
- 古新聞を使う(グシャグシャっと押し込むと立派な緩衝材に)
- 段ボール片でガード(↑上述のお店のやり方を参考に)
- 家にある気泡緩衝材を使い回す(受け取った方には負担になるかもしれませんが、せめてもの有効活用として…)
- ワレモノは入れない!(簡易包装しやすいモノを選ぶ)
- 簡易包装する旨を相手に伝える
わが家は妻が梱包担当。天才的な「簡易包装家」です。簡易包装度を少しでも上げることにクリエイティブな情熱を燃やし、贈る相手もそれをたのしんでくれています。こうなるとすべてがスムーズです。リスクはゼロ。むしろ、その「工夫」が贈り物の付加価値となるくらいです(妻の「理想の小包像」はこちら。
先日は、誕生祝のケーキの緩衝材に、庭のハーブと花を使いました。
ハーブは「ハーブティーを淹れてケーキと一緒にどうぞ」、花は「テーブルに生けておたのしみください」という趣向。お茶として飲める緩衝材&花として生けられる緩衝材 ―― こうして「緩衝材自体が贈り物になる」ことで、不要な緩衝材は極限までゼロに近づきます。
もちろん、毎回そこまで工夫できるとは限りませんが(上のケーキも「手渡し」だったからこそできたことです)、そんな可能性を心の隅に置いておくだけでも、簡易包装のたのしさはぐっと広がっていきます。
「無駄な緩衝材はもう終わり!」―― そんな未来に向かって小さな一歩を踏み出すことは、イメージする以上に心地よい変化をもたらしてくれます。みなさんも、ぜひ。