食器洗いのスポンジ。使っていると、ボロボロにすり減ってきます。あのすり減ったカスは一体どこへ???
―― まさかあれがマイクロプラスチックの素になっていようとは、僕自身、数年前までは考えつきもしませんでした。わが家はむしろ洗剤やごみの観点から、10年以上も前に台所スポンジを卒業していました。でも、メラミンスポンジは数年前まで愛用していました! びっくりするくらいきれいになるから、最後の小さなかけらまで余すことなく粉々にして……「洗剤も必要ないし、何も残らないからごみにもならないし」と……。
アクリルたわしも、わりに最近まで使っていました。「アクリル=プラスチック」という発想がまったくなかったのです。
今はそれらをすべて卒業。でも、何の不都合もありません。わが家の食器洗いは快適そのもの。無理も我慢も一切なし。洗剤フリー&マイクロプラスチックフリーの食器洗いは簡単に実現できます。
目次
▶市販のスポンジのほとんどはプラスチック製
スポンジの材質なんて、みなさんあまり意識したことはないかもしれませんが、市販のスポンジのほとんどは、れっきとしたプラスチック製です(・・・ということを僕自身もやっと数年前にはっきりと意識しました)。
- 標準的なスポンジ・・・ナイロン、ポリエステル、ポリウレタンなど
- メラミンスポンジ・・・メラミン樹脂(という種類のプラスチック)
- アクリルたわし・・・アクリル(という種類のプラスチック)
- マイクロファイバー・・・ナイロンやポリエステルなど
すり減ったスポンジのかすは、下水を流れていきます。粒子が細かすぎて、下水処理センターでも100%は除去されず、海に流れ出てしまいます。あんなカスでもプラはプラ。特に海水の中では分解が遅く、数百年から数千年かかるとも言われます。
こう考えると、メラミンスポンジって衝撃的です。こすって、こすって、最後はまるまる全体がすべてマイクロプラスチックになってしまう ―― いやはやこれは大問題です。「洗剤が要らないからエコ!」どころではないですよね。しかも、メラミン樹脂って、ホルムアルデヒドが原料らしいんですけど…。製造過程でのホルムアルデヒドの残留が懸念されるという情報もあります。
昨今のマイクロプラスチック問題を受けて、既にスクラブ洗顔剤のツブツブや、歯みがき粉のツブツブ(いずれもマイクロプラスチックとなる)を禁止・自己規制する流れが国際的に出てきていますが、「それを言うならメラミンスポンジだって…」と思ってしまいます (まだメラミンスポンジによるマイクロプラスチック発生の詳しい調査研究はなされていないようです) 。
▶洗剤もマイクロプラも流さないわが家の食器洗い
さて、わが家がここ数年続けている食器洗いの方法をご紹介します。
- 「びわこふきん」・・・洗剤を使わずに食器が洗える木綿100%のふきん。10年以上愛用
- ヘチマスポンジや亀の子たわし・・・フライパンや鍋のほか、根菜の泥落としに。汚れを気にせずガンガン使える
- オールステンレスの金たわし・・・シンクやガスコンロ、鍋の頑固な焦げつきの最終兵器。ひとつあると安心
①びわこふきん
木綿100%の自然素材なのに、お湯だけで食器が洗えるびわこふきん。一昔前、琵琶湖の水質汚染が問題となった際、「洗剤を使わず、琵琶湖を汚さない」というコンセプトで開発されたロングセラーです。これ1枚あれば、 台所に洗剤ボトルもスポンジも必要なし!!
「ガラ紡(ぼう)」というデコボコした糸で織られているため、油汚れも上手にこそげ落としてくれます。質感もふんわりやわらか。料理研究家の有元葉子さんをはじめ、雑誌などで推薦されることも多く、根強いファンがたくさんいます。(※しぶとい油汚れについては↓下記を参照してください。)
わが家はもう10年以上愛用していますが、とにかく使いやすい。スポンジから移行した直後は、手がスポンジに慣れきっていたため、「ややつかみにくいかな…」と感じたのを覚えています。でもそのうちすっかり慣れてしまい(慣れるってすばらしい)、今は友人宅などでたまにスポンジを使うと、あまりに人工的な触り心地なので「おぉ、近未来…」と感じてしまう自分です。
「つかみにくい」と感じた友人の中には、4つにカットして使っている人もいます。ほどけないように端を縫うらしいです。「なるほど!」と感心しましたが、縫い物が苦手なわが夫婦には真似できず。うらやましい・・・。びわこふきんさん、小さなサイズの新商品も出してください。
さて、このびわこふきん、何がいちばんうれしいかと言うと、「洗濯機で洗えること」です!!! 食器洗いスポンジって、どことなく不潔な気がするのは僕だけでしょうか? 細かい汚れや食品カスが入り込んでも、洗濯機で洗うことさえできない。手でギュッと絞っても完全に乾くことはなく、いつもジメジメ。それを「もったいないから」と、そのまま何カ月も、次第に薄汚れてきて「本当に汚いからこれは捨てなければダメだ!!」となるまで使い続けるのです(もっと早く捨てろという噂もありますが…)。まさに「雑菌の温床」(あるいは強い洗剤のせいで雑菌さえも繁殖できないのか? それはそれでこわい) ―― 僕は常々、スポンジというものの存在を不気味に感じてきました(使い方が悪かったのかもしれません)。
その点、びわこふきんは、毎日洗濯機でピカピカに洗って、お日様に干せます。何て清潔! パリッと乾いた新しいびわこふきんを引き出しから取り出して、毎日新しいスタートを迎えられる幸せ・・・ああ、もうスポンジには戻れません。
もちろん、びわこふきんも汚れます。汚れたら、煮洗いしましょう。酸素系漂白剤を使うと真っ白になるようですが、わが家はなるべく漂白剤の使用を減らしたいので、ただの煮洗いしかしません。汚れが目立ってきたら、今度は雑巾として、床拭きに戸棚拭きにと大活躍(プラ製のスポンジさんには真似できない技です)。骨の髄まで使い切ったら、最後は庭に埋めます(庭のない方はもちろん燃えるごみでOK)。感謝を込めて、小さく刻んでから埋めれば、早く土に戻ります。
☆びわこふきんは最近大人気で、楽天やアマゾンなどで法外な価格で売られているのをよく目にします。わが家のちっぽけなオンラインショップで細々と適正価格で販売していますので、どうしても手に入らない方はご利用ください。再利用封筒のゼロウェイスト梱包でお届けします(頻繁に売り切れになる点、ご容赦ください)。
②ヘチマスポンジ、亀の子たわし
ヘチマは現代の奇跡です。そのすばらしさについてはこちらの記事でさんざん礼賛しましたので、再度礼賛したくなる気持ちをぐっと抑えて割愛します。汚れたら庭に埋められるので、鍋や根菜の汚れにガンガン使えるのが強みです(びわこふきんだと、織り目の間に食品カスが入り込んでしまうため)。ただ、「天然の植物そのまんま」なので、やや「へたり」が早いです。鍋などをガシガシこすっていると、すぐに破れます(破れたら庭へ)。
亀の子たわしは、より丈夫。持ちやすく、安定感があります(さすが市販品)。ただ、毛の中に食品カスが詰まる恐怖と隣り合わせです(いつもそればかり考えている人みたいですが、本当に嫌なんです)。だから、亀の子たわしは、たとえ毛に詰まっても「まぁいい」と思える汚れにしか使いません。たとえば人参やごぼうの泥落とし。ほぼきれいになったフライパンの最後の焦げ付きetc. 使い終わったら、必ず乾かします。湿ったままだと、また「雑菌の温床」の恐怖が頭をもたげてきます。
③オールステンレスの金たわし
どうしても取れない汚れに使います。ただ、金属だけあって、こすった場所を痛めてしまう気がするので、多用はしたくない感じです。また、使い古してくると、細かい金属片が出るので、それもうれしくありません。あくまでも「どうしても汚れが取れない時」に水戸黄門のように登場してもらうイメージです。
▶ギトギトの油汚れや、生肉・生魚を洗う場合
ギトギトの油汚れは、必要に応じて、びわこふきんに石鹸をつけて洗えばOKですが、わが家は最近それすらやめました。「重曹」で十分なのです。
重曹ってホントにすごいです。研磨効果があって、しっかり汚れが落ちます。消臭効果もあるので、さっぱりさわやかに洗い上がります。いつも使えるように置いておけば、水筒や茶わんの茶渋や臭いも気軽に落とせます。↑上の写真はちょっと見栄を張って、きれいな木のさじを突っ込んでみましたが、ふだんは少しぬらしたヘチマたわしを直接「チョッチョッ」とつけて使っています。スプーンなど全然必要ありません(単に「絵になる」だけ)。
でも! 最近、さらに耳寄りな情報を知人から教えてもらいました。「米ぬかでどんな油汚れもスッキリ落ちる」というのです。さっそく試してみると、たしかに! 油汚れの上に直接米ぬかを振りかけてこすると、油汚れが吸収されます。水ですすげば、もうスッキリ。ぬかは精米所でただでもらえます。しかも完全パッケージフリー!
大興奮で調べてみると、「米ぬかで洗える」という情報が出てくること出てくること(たとえばこちらやこちら、参考にさせていただきました)。古来は、お風呂で体を洗うのにも使われたそうです。昔の人の知恵には驚かされます。(ぬかのほかにも、灰汁やムクロジの実など。ワクワクしてきました!)
いや、ちょっと待った! 「米ぬかを流すと、川が汚れるんじゃ・・・?」と思った方! 僕も同じ疑問を持ちました。10年以上前、「米のとぎ汁が川を汚す」って、一時期騒ぎになりましたよね。調べてみると、そういう部分もあるにせよ、むしろ「無洗米の販売戦略」として情報が流布された感があるようです(参考情報:こちらやこちら)。なので、「米ぬかが下水を流れる=言語道断の絶対悪」ということではなさそうです(そもそもみなさん、毎日お米を研いで流していると思うし、ぬか漬けを混ぜた手とか、普通に洗ってますよね…)。もちろん、むやみに流すのはよくないと思うので(水道管も詰まりそうだし…)、油汚れがひどい時に使うにとどめ、汚れをこすったあとは、なるべくこそげ落として生ごみに捨ててから水ですすぐとよさそうですね。
もうひとつ。重曹も米ぬかも出番を失う「最強兵器」があります。それはパスタやうどんのゆで汁。麺類を茹でたら、ゆで汁は絶対に捨ててはいけません。必ず鍋に取っておき、フタをして保温しておいて、食べ終わった皿にまだ熱いそれをぶっかけます。あら不思議。あとは水でこすればスッキリきれい。魔法のようです。洗剤なんて一切不要。
いつも食器洗いを面倒くさいと思っている自分ですが、パスタの時だけは別。いつも率先してゆで汁をぶっかけ、一瞬でお皿がきれいになるドラマチックな食後のひとときをたのしみます。そして妻に感謝されます。いいことづくめです。(米のとぎ汁同様、麺類のゆで汁も下水を汚すという情報があります。気になる人は下水に流さず庭に撒きましょう。でも・・・みなさんどちらにせよそのまま下水に流してますよね? だったら活用しない手はなし。)
パスタのゆで汁に限らず、野菜を茹でたあとのお湯もなかなかいいです。要は「お湯」。とにかくお湯さえあれば、ほとんどの汚れは簡単に落ちるのです。
その通り。生肉や生魚などの「もっとも恐るべき汚れ」も、煮えたぎる熱湯さえあれば怖くありません。最初に熱湯をかけてしまうと、タンパク質が凝固して汚れが落ちにくくなるらしいので、ヘチマなどで軽く汚れを落としてから、熱湯でばい菌を抹殺します(ヘチマにも回しかけてしっかり熱湯消毒)。安心安全100%です。プラ製のまな板やプラ製のスポンジだとこうは行きません。プラスチックは種類によっては耐熱温度が90℃です。添加剤が漏れ出る危険があります。自然素材、つくづく最高!です。
▶ほかにもまだある代替品
わが家の食器洗いは以上の通りですが、わが家が使っていないものの中でも、よさそうなものはいろいろあるので、最後にいくつかご紹介します。「びわこふきん」は現在需要過多の模様で、「なかなか買えない」という声もよく耳にします。そういう意味でも、「第2、第3のびわこふきん」や「びわこふきんに代わるもの」が必要だと感じています(いい情報をご存じの方はぜひ教えてください)。
①セルロースのスポンジ
100%植物由来のセルロースのスポンジは土に還ります。実際、コンポストに入れている友人もいます。やわらかくてさわり心地もいいですが、強く使うとちぎれやすい印象もあります。
②「アクリルたわし」ならぬ「コットンたわし」
プラスチックのトークイベントをしていると、よく「アクリルたわしを愛用していたのでショックです…」という方に出会います。「洗剤不要、エコで手作りできる」はずだったアクリルたわし。障害者の福祉事業でも広く作られていて、その志はすばらしいと思うので、僕自身、障害児を持つ親として、心が痛みます。ただ、最近、「アクリル」を「コットン」に変えた「コットンたわし」がよく紹介されています。僕も友人が手作りしたものをいただきました。
美しい! あまりに美しくて、汚すのが心配でガンガン使えないのだけが玉に瑕ですが、 とてもいいと思います。アクリルたわしを編んでいた方は、ぜひコットンに代えて編んでください。人気サイト「プラなし生活」さんによる作り方の紹介動画もあります。雑誌『婦人之友 2019年07月号 』 でも詳しい作り方が解説されています。
③竹の布
今、気になっている素材です。竹から作られた布ということで、抗菌作用もあり、肌触りもよさそう。ナチュラルで魅力的! なのですが、ひとつ大きな懸念があります。市販の竹の布のほとんどは、加工過程(=竹の繊維をパルプとして加工する)で有害な溶剤を使用する「ビスコース法」で作られているそうなのです。
もちろん、できあがった製品が必ずしも有害ということではないと思いますし、竹は基本的に無農薬、しかもどんどん成長する「再生可能」「持続可能」な素材なので、エコな側面もいろいろあります。むしろ、農薬まみれ、化学染料まみれのコットンと比べたら、こちらの方が遥かによさそうな気もします。ただ、ビスコース法の問題は、拙訳『プラスチック・フリー生活』のほか(p.117「レーヨン」の項)、優良ブランドの代表格であるパタゴニアも指摘しています。
曰く、「竹素材について研究を重ねてきたが、ほぼすべての竹繊維が有害なビスコース法で作られるため、当社としては一切使用していない」 ―― 加工過程での使用とは言え、大気放出や排水による環境汚染が危惧されるほか、工場で働く人々の健康リスクも心配されるから、とのこと。なるほど。パタゴニアの言葉には力があります(ここまで考えてくれるブランドって、本当に信頼感があります。エシカルってこういうこと)。
竹は日本にも豊富なので、日本の竹で安心安全な竹の布が作られたら最高だと思うのですが・・・新しい流れに期待したいです。
それでは、話がふくらみましたが、今日はこの辺で! 洗剤もマイクロプラスチックも流さない食器洗い、ぜひ試してみてください。