パンが断然おいしくなる~トースターを使わずにパンを焼くメリット

わが家にはトースターがありません。やめてから6年になります。

どうやってパンを焼いているかというと、厚手の鉄のフライパンで焼きます。上にボウルをかぶせて、蒸気を籠らせて。

すごくおいしいです。焼くたびに「これは絶対やめられない」と思う。

まったく不自由ないどころか、おいしさも数段増し。しかも電化製品ラクラクひとつカット!わが家の「トースターフリー」のトーストのコツとメリット、ご紹介します。


▶フライパンを予熱する

まず、鉄製のフライパンをガスコンロの火にかけて、あらかじめ熱々に熱します。わが家が使っているのは、インドのチャパティ用のフライパン。どんなフライパンでも構わないと思いますが、鉄製の厚手のものがいいです。

わが家のチャパティパン。インドのアパートにあった使い古しのものを、大家さんにゆずってもらって持ち帰ってきた思い出の品。平たいので、パンケーキやクレープを焼くにも重宝。チャパティはほとんど焼いていません。フタをすれば、お餅もおいしく焼けます。

テフロンなどのフッ素樹脂加工はおすすめしません! フッ素樹脂って、正式名称は「ポリテトラフルオロエチレン」と言い、プラスチックの一種なんです。要はプラコーティングしたフライパン。それを火にかけるって・・・そう思ったら絶対やりたくないですよね。

しかも、テフロンって、いつの間にか剥げてきますが、あの剥げたカスは・・・あれは要はマイクロプラスチックです。つまり、消えてなくなりません。どこへ行ったのかと言うと、下水を流れたのか、あるいは料理に混入したのか???

そう考えると、鉄のフライパンは本当に安全安心! 焦げついたとしても、鉄ですから、金たわしでゴシゴシこすれば万事OK。なぜみんなが「こびりつかないフッ素樹脂加工」をあれほどありがたがっているのか、「全然わからないな~」と思っている自分です。


▶パンを濡らす

次にこれ、いちばん大事なポイントです。合言葉=パンは水分でよみがえる! ひと手間、ではありますが、これをしないと、パンは死んだも同然(言い過ぎか?)。おいしさが5倍くらい変わってきますので、絶対に手間を惜しまずに湿らせます。

湿らせる方法は、いちばんいいのはスプレーです。でも、わが家も以前はそうしていたのですが、スプレーが壊れたり、中がいつの間にかカビっぽくなっていてゾッとしたり…。

いちばん最悪だったのは、「これはパン用♪」と気に入って使っていたスプレーを、ある時妻がトイレ掃除に使ってしまったこと。パンにスプレーしようとしたら、恐るべきエッセンシャルオイルの香りが…。

 ―― こういう予期せぬリスクの数々を思うと、自分はもう「手のひら」一択です。スライスしたパンを左の手のひらに乗せ、ぬらした右手でパンパンと、表と裏を両面湿らせます。僕はたっぷり目に濡らすのがお気に入り。しっかり濡らして、しっかり蒸気を籠らせると、すごく美味しく焼きあがるのです。


▶蒸気を籠らせる

熱々に予熱したフライパンに、しっかり濡らしたパンを乗せます。ちゃんと予熱ができていれば、パンを乗せた瞬間、ジュワッと音がして、ムードもバッチリ。あとは、必ずフタをして蒸気を籠らせます。

フタは何でもいいですが、わが家はステンレスのボウルを逆さまにしてかぶせています。熱くなるので、トングとミトンを使います。ボウルを使っている理由は、うちのインドのフライパンは浅いので、普通の鍋のフタだとパンを押しつぶす感じになってしまうため。なので、普通のフライパンをお使いの方は、サイズの合う鍋のフタをかぶせれば、より手軽ですね。

ちょうど雨で薄暗かったので、不気味な写真になってしまいましたが、こんな感じです。

「フタに穴がない」のは結構重要かな~とは思っています。しっかり蒸気を籠らせるためです。穴のあるフタで焼いたことがないので、比べたことはないのですが…。気になる方はぜひ、穴ありバージョンと穴なしバージョン、焼き比べてみてください。


▶お茶を淹れながらじっくり焼く

焼いている間は、焦げないように火は弱火に。ただ、僕は「しっかり濡らしたパンを、しっかり目の火で焼く」のが好きです。火が弱すぎると、いつまで経っても焼きあがらず、待ちくたびれるし、パンも干からびてくるので、「少し強めの弱火」が理にかなっています。ちょうどいい塩梅の火加減だと、あっという間においしそうな焦げ目がついて、裏返して、すぐに焼きあがります。お茶を淹れている暇もないほど!

裏返すときは、中に蒸気が籠っているので、(しないとは思いますが)火傷をしないように気を付けてください。しっかりパンを湿らせておくと、モワモワ~っと、思った以上にすごく蒸気が上がります。それがおいしく焼きあがるポイントです。

しっかり端っこに焦げ目がつくように、強めの弱火でこんがり焼きます。(この写真はもうちょっと…)

▶気に入っているポイント

このトースターフリーの焼き方、何が気に入っているかと言うと、まずは・・・

1.すごくおいしい

トースターって、やっぱりパンが乾燥する気がします。最近は蒸気注入みたいな高性能のトースターも販売されているようですが、値段も高いし、それもいつかは壊れるし。そう考えると、つくづく、この「原始の鉄のフライパン」、優秀だな~と思います。

2.保温性

厚手のフライパンの保温性も大きなメリットです。トーストって、シンプルなようでいて、実は「周辺的なタイミング」が結構むずかしく、「せっかく焼きあがったのに、食べる人が席についていない」とか、「パンが焼きあがったのにコーヒーがまだ」とか、「添えるベーコンエッグができてない」とか、焼きたてをおいしく食べようと思うと、とにかく障害物競争みたいにハードル満載なんです。そんな時、鉄のフライパンなら、火から下ろして、しばらくそのまま、あたたかく保温しておけます。これ、すごーく便利です。せっかく焼いたパンが食べる前に冷えてしまうって、屈辱的なので。。。

あと、僕は「あたたかいパンに冷たいバター」が絶対のこだわりです。バターが溶けるのは本当にダメ! 「あたたかいパンに冷たいバターを乗せる」、これはなかなかレベルの高い行為です。パンが冷めては困る。でも、バターをあらかじめ冷蔵庫から出してしまうと、バターが冷たくなくなってしまうので困る。そうなると、「バターを直前に冷蔵庫から出す」というアクションがひとつ加わるので、余計に忙しくなります。でも、フライパンの上でパンを保温しておけば、慌てずに済みます。鉄のフライパンの保温性は、ゆったりしたパンの時間に欠かせない重要ポイントなのです。

3.後片付けがラク!

フライパンは、後片付けが圧倒的にラクです。ザザザッと金たわしでこすって、あとは錆びないように火にかけて水気を飛ばすだけ。「え~面倒くさそう…」と思いますか? いえ全然! トースターで焼けば、網の下にパンくずが落ちます。それをいちいち(またはたまに)掃除する方がよほど面倒くさい。さらにやっかいなのは、網の部分にチーズパンのチーズなどがくっついてしまうこと。網を取り外して、かさばって洗いにくい網をこすって、すすごうにも水が網の間を流れ落ちてしまって大量の水が無駄になり、やっと洗いあがったと思ったら、網がうまく取り付けられなくて、「あれ、どうやるんだっけ???」・・・これ、まじめに発狂ものです。そんなことしている暇はないんです。フライパンの方が絶対ラク!

4.困ったことがあるとすれば・・・

唯一、いっぺんにたくさんのパンを焼けないという点はあります。3人の子どもに2枚ずつ、とかはアウトですね。ただ、トースターも、大型のものでなければ、そんな枚数を一度に焼くのはむずかしいと思います。わが家は、こんな時は大きい薄手のフライパンで焼いたり(「厚手のフライパン」に比べると焼き上がりは明らかに劣ります)、コンロの魚焼きグリルを使うこともあります(←こちらは子どもが自分で焼くときに便利ですが、やはり後片付けがすごく面倒…)。


鉄のフライパンで焼くようになって、パンの時間がより至福度を増しました。「パンがごちそう」と思います。それって結構幸せなことです。

最近、パンを焼くたびにいつも思い浮かべるイメージがあります。それは、尊敬する料理家細川亜衣さんのトーストの焼き方です(←本当にすごいのでぜひご覧ください)。

これを見たとき、慄きました。「トーストにここまでの世界があるのか!」と。すぐに真似しました。とてもおいしかった。でも、今の日常では、毎回ここまでの真似はできない、と思いました。「パン1枚に蒸し器」はいろんな意味で気が引けて、また、ゼロウェイスターとしては、「オーブンペーパーで包む」(=ごみが出る)を日常的な習慣にはしたくありませんでした(オーブンペーパーもシリコーンですしね…)。

でも、トースターにおまかせして「チーン」ではなく、鉄のフライパンにボウルをかぶせて、じっくり耳を澄ませながら焼いていると、この細川亜衣さんの焼き方にも通じる真摯な時を過ごせている気がします。パン1枚をどれほど大切に食べられるか? それは些細な日常の営みだからこそ、人生を左右するような大きなことであるように思うのです。