ゼロウェイスト・コーヒーの心地よさ

日々の幸福はコーヒー抜きでは語れない ――― と言うとさすがに大げさかもしれないけれど、コーヒーが心底好きです。

朝のコーヒー、午後のコーヒー、夜のコーヒー、どれも甲乙つけ難い。とりわけ今は、子どもが3人いる「ドタバタ自営生活」なので、ゆったりコーヒーを淹れられるような時間は皆無に等しい。そんな中だからこそ、朝でも午後でも夜でも構わない、数分の隙を狙ってコーヒーを淹れ、できる限り呼吸を落ち着けて口に含む一瞬の休息には、単なる「コーヒー1杯」を超えた価値がある気がしています。

コーヒー豆は南国のもの。先進国による搾取の構図や、生産地の環境破壊など、様々な問題も指摘されています。本当に突きつめて考えるなら、いっそ飲むのをやめた方がいいのかもしれない。でも、こんなにも大きな幸せを受け取らせてもらっているのだから、「お願い。許してください」という気分で、せめてオーガニック&フェアトレードの豆を選び、大切に大切に飲んでいます。(コーヒーの諸問題はいろいろなところで語られていますが、手っ取り早く知りたい方にはドキュメンタリー『おいしいコーヒーの真実』がわかりやすくておススメです。)


▶いちばんゼロウェイストな抽出スタイルは?

わがコーヒー人生の幕開けは、30才を過ぎてから。大好きだったバークレーのファーマーズマーケットで、晴れた昼下がり、ブルーボトルコーヒーの豆を買うたのしみを覚えたことがきっかけでした。それほど強いこだわりがあるわけではなく、いまだに「ブラジル」とか「エチオピア」とか言われても全然ピンと来ないのですが、コーヒー好きの友人たちにいろいろ教えてもらい、器具までゆずってもらいながら、いとも愉しきコーヒー歴を重ねてきました。これまでに使ったのは、

の6種類。それぞれに良さがあったけれど、今は「金属フィルター」と「柿渋リネン」の2つに落ち着きました。もちろん、どちらも完全ゼロ・ウェイスト&プラスチックフリー!

使ってみての個人的感想を書き出してみると…

ペーパーフィルター〇無漂白なら生ごみと一緒に埋められる(=コンポスタブル)
 ※ただし、「樹脂処理されたペーパーフィルターもある」との
  指摘もところどころで目にします
△パッケージのプラスチックは避けられない
△無漂白のものはどこでも買えるわけではない
✕いちばんのストレスは「買い忘れ」!
ネル〇上質感は最高
〇完全ゼロウェイスト&完全プラスチックフリー
✕水につけて冷蔵保存して・・・の手間がどうしてもムリ!
フレンチプレス〇完全ゼロウェイスト&大体プラスチックフリー
〇お湯をそそいで4分放置するだけなので超手軽&技要らず!
△メッシュ部分が洗いづらい(微細な汚れが落としにくい)
エアロプレス〇1分で淹れられる高速コーヒー
△たくさん淹れようとすると、レバーが異様に重くて押し込めない
✕専用のペーパーフィルターを買い続けないといけない
✕器具全体がプラスチック製
柿渋リネン
(ユルクル)
〇完全ゼロウェイスト&完全プラスチックフリー
〇ネルと違って、洗って絞って乾かすだけなので手軽
〇高知製なのでローカル!(わが家にとって)
金属フィルター
(kinto)
〇完全ゼロウェイスト&完全プラスチックフリー
〇洗って乾かすだけなので手軽!

金属フィルターはKINTO (キントー)のCARATを使用。見た目も秀逸で、自分としては申し分なし。「粉っぽさが気になる」という人もいるようですが、少し粗めに豆を挽けば、特に気になる感じはありません。

↓デザインがすごく気に入っています。手入れも簡単

柿渋リネンは土佐清水のユルクルさんの手によるもの。柿渋の抗菌作用のお陰か、清潔感があり、あっという間に乾く。抽出速度が「自分の好みよりも少しだけ速いかな…」という気もするけれど、それはそれでスッキリと雑味のないコーヒーが入るし、子どもにコーヒーを淹れてもらう場合には、速さはむしろメリットにもなります(子どもは決して辛抱強くないため)。柿渋リネン+ステンレスポットなら割れる心配ゼロなので、子どもにも安心してお願いできます(と思って↓写真を見たら、ドリッパーは陶器でしたが、kintoのドリッパーに比べれば、そんなに割れやすい感じはありません)。

↓小2の娘でも使いやすい柿渋リネンのフィルター

▶豆も手軽に“ゼロウェイスト焙煎”

わが家は、豆も自家焙煎。と言っても、何ら大層なことはありません。非電化工房の「煎り上手」というごく単純な焙煎器を使えば、誰でもガスコンロの上で簡単に手焙煎できます。「コーヒーの焙煎なんて一般家庭にはムリ」というイメージが一般的だと思いますが、「焙煎」って、要は「焦がす」こと。なので、メカニズムは単純そのもの。薄緑色の生豆を焙煎器にザラザラーっと入れ、ガスコンロの上で7~12分ほどシャカシャカ振り続けるだけで、ちゃんとあの「コーヒーの香りのする茶色い豆」ができ上がります。

大事なのはその「加減」だけ。振り続けていると、パチパチと豆がはぜる音がして、香ばしい匂いが立ち込めてきます。早めに終えれば「浅煎り」、もう少し長く焙煎すれば「中煎り」、2回目のはぜが終わるころまで焙煎すれば「深煎り」。焙煎具合を自由に調整できるのも手焙煎の魅力です。白い煙がもくもく出るので、換気扇が欠かせませんが、煙には部屋をいぶす効果もありそうなので、自分はよく、そのまま部屋を煙だらけにして悦に入ったりもしています(室内でホワイトセージを焚くイメージ。ちょっと違うという噂もありますが…)。

生のコーヒー豆は、英語ではgreen coffee beansと言います。この翡翠のような薄緑色、いつ見ても「きれいだな~」と惚れ惚れします。こんな「ただの木の実」を、こうして香り高く焦がして飲むことを思いついた昔の人は本当に凄い。

肝心の味は、ムラを出さないようにただひたすら振り続けるだけで、普通にとてもおいしい豆になります。とにかくびっくりするほど簡単なので、「自分もたのしめそう!」という方には本当におすすめ。ただ、言うまでもなく、「専門店の高品質な豆」とまったく同じような仕上がりになるわけではありません。時々、鎌倉の友人がディモンシュの美味しいコーヒー豆をプレゼントしてくれるのですが、自分の豆とあまりに香りの豊かさが違うので、毎回感動に打ち震えてしまいます(→高級店の豆の価値がより一層ありがたく感じられるという意味では、これも手焙煎の大きなメリットと言えるでしょう)。

「専門店と同じように焙煎できるわけではない」のに、それでも手間をかけて、自分がわざわざ手焙煎を続ける理由はこちら。

「豆が酸化しない」「いつもフレッシュな状態でたのしめる」というのは、山暮らしのわが家にとってはものすごく重要なポイントです。美味しいコーヒー豆をこまめに買いに行ける店が近場にない中、酸化しない生豆の状態で豆を買っておき、自分で少しずつ焙煎できるのは理にかなっています。

さらに、生豆はとてつもなく安いです。オーガニック&フェアトレードのものが100グラム200円台~。途上国の生産者の人たちのことを考えると、フェアトレードのコーヒーを飲むことはとても大切です。生豆なら、ムリなくフェアトレードのコーヒーにシフトできます。

そして、何と言っても、自家焙煎はたのしい! 「手焙煎している」と言うと、「え、自分もやってみたい!」という仲間が必ず出てきます。手焙煎の輪が広がって、わが家の回りでは、はまりにはまった近所の知人が何と30キロ入りの麻袋で生豆をまとめ買いしてくれるようになりました。お陰で、自分は今、パッケージフリーでいつでも好きな時に生豆を買えるという夢のような幸運を享受しています。こんな田舎に住みながら、宅配便にさえ頼らない究極のゼロウェイスト&プラスチックフリーコーヒー! ビバ、手焙煎!!

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そんなこんなで、すっかり安定期に入ったわが家のコーヒーライフです。たとえ名店の味には及ばなくても、十分においしく、たのしい。ゼロウェイストに軸をシフトしたことで、「たくさんの種類の中から目移りしながら美味しい豆を買う」という消費軸からも一歩離れ、「足るを知る」と言うか、ある種本当の充足感が生まれた気もします。お陰で、名店の美味しいコーヒーを時々飲む愉悦も倍増! わがゼロウェイスト・コーヒー人生、つくづく最高です。