中高生からの20の質問に答えました③

東京の自由学園のみなさんからの質問に答える3回シリーズの3回目です。(1回目はこちら、2回目はこちら


目次

▶Q. プラスチックを減らすことに成功したら、将来人間はどのような生活を送っているのでしょうか? 昔のような原始人的な生活に戻るのか、新しく環境にやさしい物質ができて、より新しい発展した生活が送れるようになるのかが気になります。

A. それはきっと、私たちが決めるのだと思います! 原始人的な生活を選ぶことによってプラを減らすこともできるし、より新しい発展した生活を目指しつつ、プラを減らすこともできるはずです(あるいは「発展した生活を妥協したくないから、プラを減らせない」という破滅的な未来もありえる)。僕自身は、「どちらか一方」ではなく、「その中間」あたりが目指したいラインです。原始人的な生活に戻るのは嫌だし、かと言って、今のままの極度に便利な生活水準を死守する必要も感じないので…。まずは過度に豊かになった現代的暮らしを顧みて、無駄を省けるところは省き、よりシンプルに、よりすっきりと、大切にできる少量の物に囲まれて、自然ができるだけ損なわれずに残ってくれたら、そんな未来が自分にとってはいちばん幸せかな、と思っていますよ。


▶Q. 今、プラスチック削減や水素で動く飛行機や車などの開発がすすめられ、地球温暖化を阻止する活動が求められています。中には「10年以内にCO2を●%削減しなければ取り返しがつかない」という人が多くいますが、服部さんはこの意見をどのように考えていますか?

A. 本当に取り返しがつかないんじゃないかな、と思っていますよ。人々も、社会も、もっと真剣になったらいいのにな、と。プラ汚染も気候変動も、あまりに急激に進んでいるし、現代社会はあまりに便利になりすぎていると思うので、もっと違う未来に進みたいです。でも、そう思わない人も大勢いるし、実際問題、自分だって、できる限りエコでありたいと思っていても、できることをすべてできているわけではないです。「わかっていても、いちばん賢い選択ができないーこれが人間なんだろうな……こうやって人類は滅びていくのかな…」なんて思ったりもするほど。でも、自分の子供や孫のことを考えれば、もちろん、汚れた地球を残したくなんかありません。やはり(たとえどんなに不完全でも)よりよい未来に向けて、できることをしたいし、そうなる社会を(選挙や買い物やSNSなどを通して)盛り上げていきたいです。


▶Q. スーパーで買う生鮮食品のトレーなど、欲しくなくてもついてくるものがとても多いのですが、なるべく買わないということ以外に工夫してらっしゃることがあれば教えてください。

A. いや、「なるべく買わない」に尽きると思うのですよ(笑)。「本当に欲しいとき以外は安易に買わない」「トレーなしで買える肉屋さんや魚屋さんにできるだけ足を運んでマイ容器で買う」くらいしかできないと思います。「減らす」ことの効果は絶大です。ゼロにしなくても、まず半減しましょう。そして、半減は簡単です。


▶Q. 豆腐に含まれるシリコンはどのように見分ければいいでしょうか?

A. 豆腐に使われるシリコーン樹脂は、最終的に成分が「残らない」または「残ってもごく微量である」という“加工助剤”という位置づけのため、表示の義務もないと聞きます。なので、表示されていないからと言って、入っていないとは限りません(かなりの豆腐に入っているらしいですよ)。シリコーン樹脂を使っていない豆腐を食べたいと思ったら、本当にこだわりの製法で作られている豆腐を選ぶか、信頼できる製品のみを販売している生協や自然食品店などの豆腐を買うしかないのかな、と思います(そういう豆腐は本当においしくてびっくりしますよ! 値段の価値は確実にあります!)。


▶Q. バイオプラスチックなどのプラスチックは海のごみになっても大丈夫だと聞いたことがあるのですが、実際には大丈夫なのでしょうか?

A. いえ、ダメです。私たちがイメージするとおりの「海でもちゃんと分解するバイオプラスチック」ならばもちろん大丈夫なのですが、現状では、バイオプラスチックはそんなすぐれ物ではありません。まず、生分解性が完全でなくても認証が取れてしまったり、また、原料の一部が生物由来であるという「バイオマスプラスチック」が(本当は生分解性がないにも関わらず)生分解性があると勘違いされていることも多々あります。そして、土中で生分解性が確認されたからと言って、それが条件の異なる海中でも同じように生分解するわけではありません。生分解性のある物質が、冷たい海水の中ではまったく状態が変わらないという情報も耳にします。バイオプラスチックだからと言って、海中に投げ込んだら、ふつうのプラスチックと大差ないマイクロプラ汚染を引き起こす可能性があります。


▶Q. もしプラスチックの原料である化石燃料がなくなってしまった場合は、この地球はどんな世界になってしまうのでしょうか?

A. 化石燃料は、プラスチックだけでなく、ガソリン、灯油、重油、それに天然ガスや石炭、火力発電などにも関係しますよね。枯渇したら、人間社会に想像できないほどの影響が出ることは必至ですし、だからこそ、何十年も前から警鐘が鳴らされているのだと思います。僕は「化石燃料が枯渇しないような未来」に向かって進みたいですし、「たとえ枯渇しても困らない」ような世界になってほしいと思っています。そのためには産業の転換は不可欠ですし、プラ削減もその大きな一部として位置づけられると思います。


▶Q. 仮に日本で出ている生ごみをすべて堆肥化したとして、欧米のような広い国ではなく日本の狭い国土だと、その堆肥を生かしきれないと考えます。それについてはどう思われますか?

A. そういった観点はとても大切だと思います。実際、日本の自治体で生ごみの堆肥化を進めようとすると、堆肥の販路が大きな課題となったりするようです。カリフォルニアや韓国で生ごみ堆肥が積極利用されているのとは大きな違いですよね。一方、生ごみの利用は堆肥化だけではありません。家畜への飼料化も可能だし、バイオガス化も可能です。いろいろな手法を適切に組み合わせれば、「日本の国土からあふれるほど堆肥ができてしまう」という事態にはならずに済むかもしれませんね。また、農家さんが生ごみ堆肥を積極利用してくれたら、そもそも「全量堆肥」でも問題ないのかもしれません。そのあたり、僕ももっと知りたいですが、現状は残念ながら、まだあまりに堆肥化の事例が少なすぎて、そこまでの心配がほとんど必要ないような状況だと思います。まずは少しでも堆肥化が進み、そんな本格的な検討が必要になる地点まで行けたらいいのにな、と思います。


自由学園のみなさん、たのしい時間をつくってくださり、ありがとうございました。みなさんのまっすぐな質問、心に響きましたよ。