実はプラ!~<BR>デンタルフロスのプラスチックフリー

デンタルフロス、使っている方も多いですよね。でも、「あれが実はナイロン製で、マイクロプラスチックの素」というところまで意識している方は意外に少ないのでは??

僕自身、数年前に本『プラスチック・フリー生活』を翻訳していて、初めてそのことに気づいた時は愕然としました。

プラスチックの糸をギリギリとこすり、それが見る見るうちにすり切れていくのを目にするとき、あなたはほかでもない「ナイロンのマイクロプラスチック」の誕生シーンを目撃していることになる。一部は飲み込み、お腹の中へ。一部はうがいとともにペッと吐き出し、下水管を下っていく。(『プラスチック・フリー生活』NHK出版p.204より)

もちろん量は少ないと思うので、「実害」という意味では影響は最小限だと思うんです。でも、リアルに想像して、「イヤだな…」って感じました。

市販のデンタルフロスは、どうやらほとんどがナイロン製。でも、最近は「シルク」、つまり絹糸のデンタルフロスがいろいろなブランドから出ています。わが家も何種類か使い比べてみましたが、これが驚くほど使い心地がよくて、おすすめ! 詳しくご紹介します。


▶抜群に使いやすいRadiusのフロス

まず、代表格はこちらRadiusのフロス。特徴は、

です。個人的には、これまで数種類のシルクフロスを試した中では、使い心地はベスト。ほかのブランドのものは、歯に当てた時に切れやすかったり、ケースから引き出す時に絡みやすかったりすることがままあるのですが、Radiusのものはその辺が安心感抜群。一般的なフロスの使い心地に慣れている方にもおすすめできる水準だと感じます。

Radiusのフロス。その名も「pure silk unscented」(=無香料、純シルク)。
ラベルに踊る「プラスチックフリー」の文字!

そして、値段も全然高くない。たとえば、一般的なREACHのナイロンフロスは「50メートル600円台」という感じですが、こちらRadiusのシルクフロスは、同じ50メートルで最安値500円台! ←むしろ安い! これはさすがに例外で、ほとんどのお店ではもう少し高いですが(アマゾンでは800円台という数字が出てきます)・・・それでも「高すぎる」というほどではないですね。日用品ですから、買いやすい値段はありがたい。

100%紙(+最小限の金具)のパッケージも、↓この通り、とてもいいデザインです。

金具部分を取り外せば、紙のリサイクルに出せます。秀逸!

少し前まではパッケージがプラスチックで残念だったのですが、ちゃんと世のニーズを汲み取って、プラスチックフリーのパッケージを実現。この辺りの機動力はさすがです。

数年前のradiusのパッケージ。外は紙パッケージなのに、内側はプラケースでした。

・・・というわけで、Radiusのシルクフロスは、安心感をもっておすすめできると感じます。ただ、ひとつ注意点! Radiusのフロスには「ヴィーガンタイプ」というものもあって(「クローブ・カルダモン」「バニラ・ミント」「ペパーミント」の3種類)、それらはシルクではなく、ナイロンのフロスです。混同しやすい見た目なので、プラスチックフリーにこだわりたい方は、きちんと「PURE SILK」の文字を確認して買ってくださいね。


▶さらにエコ!なガラスケースのフロス

上記Radiusのフロスはなかなかのすぐれものですが、「真のエコ」という意味では、「使い捨ての紙パッケージ」よりも、「リユースできるガラスケース」の方がさらに上。

たとえば、わが家が気に入って使っていたGeorganicsのフロスはこんな感じ。

すっきり美しい見た目のガラスケース。

値段は、初回はガラスケースを買う分、割高になりますが(たしか1300円とか…)、2回目以降は中身の詰め替えだけなので、ひとつ500~600円と、逆に割安。そういう意味では、環境面でも、経済面でも、こちらガラスケースタイプの方に軍配が上がります。

でも・・・このGeorganicsのフロス、とても気に入って使っていたのですが、ひとつ大問題にぶち当たりました。ズバリ、安定的に買い続けられなかったのです。せっかくガラスケースを入手し、使い心地もよく、順調に使い始めた矢先、いきなり欠品続きとなり、ほどなく取り扱い終了に。。。

このパターン、希少な海外品にはありがちなケースで、要注意です。幸い、同じようなガラスケース入りのフロスを売っているブランドがほかにもたくさんあるので、それらの「詰め替え用」を入れて使うことで、ガラスケースを無駄にせずには済みましたが、せっかく「Georganicsのフロスがいい!」と思って使っているのに、いきなりほかの「得体のしれない詰め替えフロス」への鞍替えを余儀なくされたのは結構なストレスでした。しかも、それらの得体の知れないフロスが、歯に挟まってブチブチ切れたり、絡まってケースから出てこなくなったり・・・

ただ、↑これは日本でほとんどシルクのフロスの取り扱いがなかった数年前の不幸な出来事。最近は、日本でもかなりシルクのフロスが出回るようになり、きちんと継続的に同じメーカーのフロスを仕入れて販売しているお店も増えているようなので、そういったお店から買えば、心配は最小限だと思います。

たとえば、パッと思いつくところでは、こちらminimal living tokyoさんのものとか、Two Treesさんのものとか。最近は本当におしゃれな、信頼できるプラスチックフリーグッズを扱うオンラインストアが増えていますので、ぜひそういったところから、よさそうなフロスを探してみてください。

WOWEというフロスは金属ケース。旅行時にも安心でした。
(と言っても、ガラス瓶入りの手作り歯磨き粉を一緒に持参しているので、あんまり意味がないかもしれませんが・・・)

しかし・・・(↓つづく)

▶果たしてシルクのフロスはベストなのか!?

さて、これだけシルクのフロスについて書いてきて、最後に爆弾発言みたいになりますが、実はシルクのフロス、特に欧米では、動物愛護の観点から是非を議論する声も少なくありません。

絹糸がどうやってつくられるのか? ちょっとネット検索してみれば、いくらでも情報が出てきますが、一般的には、「蚕のさなぎを茹で殺して絹を採取する」とのこと。ご存じでしたか?(←怖ろしい! というか、考えてみれば、蚕が口から吐き出した絹糸って、リアルに想像すると、ちと不気味…)

欧米では、これは動物倫理に反するということで、結構批判する向きがあります。たしかに、人間の物欲のために、夥しい数の虫を育てて茹で殺すのって・・・構図としては結構グロテスクです。そんな批判を受けて、最近は何と、「ピース・シルク」(=平和のシルク)という絹も出始めています。

ピース・シルクは、「蚕を茹で殺さず、自然に羽化した後のさなぎの残骸から絹糸を採取する」というもの。これはめちゃくちゃすばらしいアイディア!!! ・・・なのですが・・・よくよく調べてみると、残念ながら本当の救いにはならないらしい。と言うのも、蚕は何千年も人間に飼い慣らされてきて、既に野生で生き延びる能力を失っているのだそうです。なので、せっかく殺さずに羽化させても、自然の中で生き延びることはできず、すぐに死んでしまうのだとか。。。(ガーン…)

・・・何だか考えさせられてしまいました。 絹は伝統的な文化の結晶。すばらしき自然素材には違いないと思うのですが、この現実をどう受け止めるのか。僕自身、簡単には答えは出ませんが、少なくとも、「知らずに能天気にシルク礼賛」よりは、知っておきたい現実ですね。

ということで、「プラスチックフリーのためにシルクのフロスを使うか?」、あるいは「動物愛護を優先し、プラのフロスを使うか?」は、結構ややこしい命題です。上述のRadiusがナイロンの「ヴィーガンフロス」を販売しているのも、そういう需要を受けてのこと。

そんな中、上述のminimal living tokyo.さんが販売されている「PLAコーンのフロス」は、ナイロンではなく、いわゆるバイオプラスチックといわれる「ポリ乳酸」のフロスで、新たな選択肢を与えてくれています。バイオプラスチックもいろいろ問題が指摘されてはいますが、石油由来のプラではない、という点では価値ある存在。数年後にはもっといろいろなフロスの選択肢が出現しているかもしれません。

シルクのフロスを使い始めたことで、初めて知った現実。つくづく、プラフリー、ゼロウェイストは世界を広げてくれます。