中高生からの20の質問に答えました①

先日、東京の自由学園の生徒さんたちにzoomでプラスチックのお話をしました。さすが自由学園。「先生」ではなく「生徒さん」主導の、熱意を感じるイベント。質疑も、おもしろい質問がたくさん出ました。時間内では収まらず、追加で書面でもお答えした質疑の一部を、自由学園さんの許可をいただき、公開します。

※イベントは保護者の方々も参加されたため、質問には保護者の方によるものも含まれているようです。

写真は、司会を担当された代表の生徒さんたちが丁寧な手紙と一緒に送ってくださった自由学園のクッキーです。無駄のない、昔ながらの良識あるクッキー箱。「こういうのって大切だな…」と思いながら、おいしくいただきました。たのしい機会をありがとうございます。


▶Q. なぜ日本はあまりプラスチック問題への意識が高まらないのでしょうか?

A.なぜでしょう?(笑) 日本は環境問題全般に関して、とても意識が低いですよね。「これが理由です」と言い切ることは僕にはできませんが、ひとつ思い当たるのは、従順で和を重んじる国民性です。

「問題意識や批判を口にする」「アクションを起こす」といったことが、子供のころから、家庭でも学校でも十分に推奨されず、評価されず、むしろ「型どおり」であることを求められる、そんな空気は随所に感じます。「みんなが使っているのだから大丈夫」「これまで大丈夫だったのだから大丈夫」というような、問題の核心に迫らない感じは、なんとなく蔓延していますよね。そういう感じだと、プラスチック問題への危機感がなかなか高まらないのも当然かもしれないし、人に先んじてプラスチックフリー生活をしてみようという気運が希薄なのも無理もないかもしれないなぁ、と個人的には感じています。

一方で、日本は概してモラルは高く、ひとたび国民の多数の中に意識化されると、そのあとの秩序維持は得意なイメージがあります。そういう意味で、ここ数年でプラ問題の深刻さの社会的な認知が進むことで、日本社会の意識の大規模な底上げが期待できたらいいな、と期待しています。


▶Q. ペットボトルキャップはワクチンになると聞いたことがありますが、それでもやはり買わない方がよいのでしょうか?

A. ワクチンにする、という志はすばらしいですが、それがペットボトルのキャップでなければいけないのか、というところは大いに疑問です。こちら武蔵村山市ボランティア・市民活動センターさんの「ペットボトルキャップの回収をやめる理由」という記事をぜひ読んでみてください。これだけの回収事業の成果が11000円…。普通に募金として集めて寄付した方が早いかもしれないし、プラ削減が求められる現状を思えば、ほかの形を考えた方がよいのかな、と思います。10年以上前にも、高校生の方が「エコキャップ運動をやめた我がクラス」という作文を書いて、作文コンテストで優秀賞を受賞していますよ。本質をよくおさえた作文だなと感心しました。


▶Q. やはりプラスチックの流出と出生率の低下からなる少子化には関係があるのでしょうか?

A. 現状ではたしかなことは何も言えませんが、「どうやら関係がありそうだ」ということで、昨今、生殖能力の低下とプラスチックの関連を指摘する研究が出てきていますよね。万人が納得するような明確な立証がなされていない現状の中、大切なのは「その中でどう考えるか?」ということだと思います。

まず、「プラスチックには、生殖能力の低下につながる可能性のある内分泌かく乱物質が実際に含まれている」ということ。そして、「それが本当に現実世界の中で、生殖能力の低下を引き起こしているのかどうかは、因果関係がとても複雑なため、立証は困難をきわめる」ということ。

トップレベルの研究者でさえ、たぶんこれを立証するのはすごく大変なことなのです。そんな難しい、もしかしたら10年経っても20年経っても立証できないかもしれないことが「今はまだ立証されていないから」と言って、私たちは危機感を持たずにこのまま10年、20年過ごしてしまってよいのでしょうか? というふうに考えると、僕はやはり、「立証されるまでアクションを取らない」のではなく、「危険性があると思われた時点でさっさとアクションを取る」、いわゆる“予防原則”の立場で動きたいと考えています。

そもそも内分泌かく乱物質を含むプラスチックを使わなければ、こんな心配はしなくてよいわけですし、内分泌かく乱物質がその辺をうようよしているということ自体、うれしくないですからね。


▶Q. 世の中には豆腐に使われるシリコーン樹脂のほかにも食品添加物がありますが、それらについてはどのように感じていますか?

A. 個人的には添加物・添加剤は少なければ少ない方がいいと思っていますよ。危険性が指摘されるものも多いですからね。わが家は可能な限り無添加のものを選んで買うようにしています。

その反面、添加物・添加剤のお陰で、利便性が高まったり、賞味期限が伸びたり、耐久性がアップしたり、という“メリット”も実際にあるのです(だからこそ添加物が使われるわけで…)。大切なのは、みんなが「本当に添加物を使ってまで、そのメリットが大切なのか?」と意識することかなと思います。「添加物を使う」こと以上に、「無自覚に&安易に添加物に頼ってしまう」ことの方が問題かなという気がします。「自分で考えて判断する」、というのが大事だと思います。


▶Q. シャンプーの中にもプラスチックが入っていないものはあるのですか?

A. 市販のシャンプーやリンスの多くに、成分としてシリコーンが配合されていると言われますが、もちろん「不使用」を売りにしている商品もあります。最近はプラスチックフリーの観点から、石鹸のような「固形シャンプー」もじわじわと広がってきています。せっかく意識されたのであれば、ぜひ新しいものを試してみてください。わが家では、重曹やせっけん、リンスにはお酢を使っていますよ。おうちにあったらぜひ一度試してみてください。やり方はこちらです。


▶Q. スターバックスやスカイラークなどの企業が、まずプラスチックストローを変えようという風にしていましたが、なぜカップなどではなくストローだったのですか?

A. これは単に、「ストローの方が変えるのが簡単だったから」だと思います(=紙製ストローに変えれば済む)。それに対し、カップは、そういう手ごろな代替品がまだない状況です。理想は、ガラスや陶器のカップを使い、使い終わったら返却してもらうことですが、イートインでは可能でも、テイクアウトでは難しいですよね(だからこそ、マイボトルの持参はすごくパワフルなのです!)。紙ストローが巨大なプラカップに突き刺さっている光景は、僕も片手落ちだとは思いますが、「何もやらないよりは一歩前進」ですから、「さらなるステップ」に期待したいところです。


▶Q. シャンプーの中に含まれているプラスチックはどのような種類のものが入っているのですか? またどのように見分ければいいのですか?

A. シャンプーは一般的にシリコーン配合が多いといわれます。シリコーンは、自然素材に由来するため、プラスチックとは厳密には異なりますが、合成的に作られた「合成樹脂」ですので、実質的にはプラスチックと大差ない存在です。シリコーンは「キューティクルをコーティングしてくれるのでつややかな髪になる」そうですが、合成樹脂でコーティングされた髪って・・・何だかちょっと気分悪いですよね…。

その他、いわゆる「スクラブ剤」の粒粒が含まれているシャンプーもあり、これはポリエチレンやポリプロピレンのマイクロビーズです。これらが下水を流れれば、マイクロプラスチック汚染が危惧されます。

フタル酸エステルなどの危険性のある化学物質もシャンプーにはいろいろ添加されていることを考えると、できれば自然食品店などの「安全なシャンプーを作っている」という積極的な姿勢を示しているブランドのものを使う方が安心かな、と思います。そういう意識がないブランドは、「これを使っていません」とアピールしておきながら、(消費者が気づかないのをいいことに)別の化学物質を平然と使い続けたりするからです。商品の宣伝文句の裏にかくされた意図、というものを考えると全体がみえやすくなるかもしれませんね。宣伝文句に躍らせられない「賢い消費者」になりましょう!

2回目につづく~