エコ志向のわが家が巨大な冷蔵庫を買ったワケ② ~ 省エネ家電はどう選ぶ?

前編➀はこちら

「脱・冷蔵庫」や「非電化冷蔵庫」の魅惑の地平を当面はあきらめ、潔く電気冷蔵庫の購入を決めた自分。とは言え、ここはせめて「量販店の店頭で何となく選ぶ」よりも一歩先へ進みたいところ。

でも、これまでずっと「家電嫌い」で通してきた自分は、「家電を選ぶ眼」をまったく持ち合わせていないのです。見るべきポイントがわからないし、「省エネタイプ!」とか言われても、メーカーの販売戦略に乗せられているだけのような…。そんな僕が、やっとのことで電力消費に実感を持てるようになり、まさかの大型冷蔵庫を納得度150%で買うに至った顛末をご紹介します。


▶ステップ1.電気の見える化

最初にやったのがこれ。電気のいちばんやっかいな点は、たぶん「目に見えない」ということなのです。これがごみなら、「こんなに出た」「こんなに減った」とアクションの結果が一目瞭然なのに、電気ときたらそれがまったく見えない。もちろん、毎月の電気料金で増減の推移はわかりますが、それは「1ヵ月間の合計値」でしかないので…。しかも、結果が見えるのが「1ヵ月に1回だけ」って、スピード感なさすぎですよね。これじゃ、やる気が出るわけもなし。

※ただ、こちらのサイトのように、毎月の電気使用量を入力して、全国の標準的な家庭よりも多いのか少ないのか、判定してみるのはおもしろくておすすめです。ちなみにわが家は、今回冷蔵庫を買い替える前、月の電気使用量は大体190~200kWh前後で、「標準家庭の38%」という判定でした。自宅用とカフェ用と、ふたつ冷蔵庫を持っている割には(しかも省エネタイプではない古い冷蔵庫…)悪くない結果だったかなと思います。

ということで、広くすすめられているのが、こちらワットチェッカー(わが家が買ったのはこのタイプの安物)。測定したい電化製品のコンセント部分にとりつけて、消費電力を手軽に調べることができます。値段もたかだか1500円~2000円程度。わが家も数年前に購入し、「これで家じゅうの電気を測ってやるぞ!!」とやる気満々だったのですが・・・

個別の電化製品の電力使用をチェックできる「ワットチェッカー」

これ、使ったことのある方はわかると思うのですが、表示されるのはただの数字なので、数字の意味を読み取るアタマがないと、馬の耳に念仏というか、猫に小判というか、「へぇ・・・」で終わってしまうんですね。。。

たとえば、パソコンを測定すると、充電中は「35~40」くらいの数値が表示されます。ポケットwifiは「10」。扇風機は微風のときで「28」。洗濯機は「170」、脱水時は「130」。今回買い替えの対象にした古い小型冷蔵庫は「85~95」くらいでした。「なるほど~!!」と嬉々として計測したのは最初の数日で、そのあとは、恥ずかしながら、数字がそれ以上の意味を持つことはなく、せっかく買ったエコチェッカーはそのままタンスの肥やし化してしまいました(でも、後述のとおり、あとで大活躍しますよ!)。


▶ステップ2.実感を持つ

そんな時に出会ったのが、高知県の西の果てでオフグリッド生活を営む木村俊雄さんの本『電気がなくても、人は死なない』でした。

木村さんは、電力会社から電気をまったく買わずに、ソーラー発電の電気だけで暮らしています。よくある「売電方式」とは違い、完全に「自家発電した分だけで生活する」(=足りなくなっても誰も助けてくれない)というスタイルですから、それはもう、すごいです。

そんな木村さんのスタイルの基本となるのが、「電気はどうしても必要なことにしか使わない」 。使いたい放題に電気を使っていたら、いくら発電したって足りるわけがない。ということで、木村さんは電力消費を最小限に抑えられていて、「常時電力を消費している家電は、冷蔵庫ひとつだけ」。

ここまで読んでも実はまだピンと来なかった僕ですが(そんなレベルまでわが家の電力消費を落とせるイメージも湧かなかった)、次の数字を読んで、突如、電気の話が現実感を帯びてきました。

木村家では「1時間100ワット」は使い過ぎです。1日24時間のサイクルで、そのほとんどの時間帯において、我が家は「1時間60ワット」で生活しています。(中略)ムダな電力を垂れ流している 「1時間1000ワット」の家庭は、ざらにありますので、そのうちの30%である300ワットの節電なんて、本当にササッとできてしまうことなんです。(『電気がなくても、人は死なない』p.63) 

「はて、わが家は1時間何ワットなんだろう?」と思った自分。史上初めて、「わが家の1時間あたりの電力消費」を電卓で計算してみました。とても簡単な計算です。まず、電気料金の明細に書いてある1ヵ月の電気使用量を月の日数で割ります。わが家の場合は、約200kWh÷30日=1日大体6.6kWh。6.6kWh=6600Whなので、これを24時間で割ると、6600÷24=275ワット! わが家の平均電力消費は「1時間275ワット」!

「ワオ!」と一気に興奮しました。「これを半分の130ワットくらいに落とすだけで、日本のトップランナーである「木村さんの世界」がすぐそこに見えてくるんだ!」と――(多少サバ読みすぎかもしれないですけど……実は割に楽天的な性格です)。

今まで電気料金の明細を見ても何の実感も持てなかった電力消費が、「1時間あたり」という捉え方によって、急に生き生きと感じられるようになりました。さっそく、ワットチェッカーをたんすの奥底から引っ張り出してきて(なかなか見つからず、探し出すのに一苦労…)、いろいろな電子機器を計測。すると、わが家の小型冷蔵庫は「85~95ワット!」→「これ1台で既に木村さんの「使い過ぎ」に突入してる! 全然ダメやん!」→「一体木村さんはどんな冷蔵庫を使っているの!?」ということで、わが省エネへの道はやっと次なる段階へと進んだのです。


▶ステップ3.現状を知る~大型冷蔵庫の方が省エネ!

いざ、冷蔵庫の消費電力の徹底リサーチ開始です。今までチンプンカンプンだった「年間消費電力量」の理解も今やバッチリ。とりあえずは「365日×24時間」で割ればよいのですから。そうすれば、「わが黄金のベンチマーク」である木村さん(勝手に…)との対比が見えてきます。

調べてみると、驚くべき事実が判明…。ご存知の方は「何を今さら?」という感じかもしれませんが、冷蔵庫はどうやら「大型の方が消費電力が小さい」らしいのです。実は以前からそんな情報はうっすら耳に入っていました。でも、それは「容積あたりの消費電力が小さい(=効率がよいだけで、合計の消費電力は大型の方が大きい)」という意味だと思い込んでいました。違うのです。大型の方が「本当に消費電力が小さい」のです。

たとえば、こちらのサイト。容量別の省エネ冷蔵庫の年間消費電力量「ベスト5」が並べられていますが、

となっています。これはあくまでも「ベスト5」なので、ほとんどの機種の消費電力はこれよりも多くなります。いろいろな機種のデータをチェックしてみると、500ℓ以上の大型冷蔵庫の年間消費電力量は250kWh前後が多い印象ですが、これを1時間あたりに割り返すと、250kWh(=250,000Wh)÷365日÷24時間=「1時間28ワット」。え、28ワット! わが家の古い150ℓの小型冷蔵庫は「1時間85~95ワット」ですよ! 500ℓの大型冷蔵庫は、わが家の冷蔵庫の3倍以上大きいのに、消費電力はわずか3分の1なのです!!!

これは大ショックでした。「1時間28ワット」なら、木村さんの世界(=1時間60~100ワット)にちゃんと収まります。「自分は今まで何てひどい冷蔵庫を使っていたんだろう…」と、思わず絶句です。(※なぜ大型の方が消費電力が低いのか知りたい方はこちらをどうぞ。)

「小型=省エネ」「中古=エコ」と思い込み、これまで大いなる自負を持って、古い小型冷蔵庫を愛用してきた自分。思えば、つらい日々でした。中は常にギュウギュウ。それでも入りきらない場合は、クーラーボックスに保冷剤を入れて、「第2冷蔵庫」としてフル稼働。保冷剤を入れ替え忘れることもしばしば。食べ物の劣化が早くて、「野菜! すぐに食べなきゃ!」「食べきれない! 人にあげなきゃ!」と常に追い立てられ……。

わが家の「第2冷蔵庫」、クーラーボックス

あの苦労、全然意味がなかったのです……。さっさと冷蔵庫を買い替えるべきでした。さらにもうひとつ。冷蔵庫の消費電力は「使い方によって大きく変動する」という事実。つまり、「中をギュウギュウ詰めにしていると、冷却効率が下がり、消費電力はどんどん大きくなる」らしいのです。ギュウギュウ詰めって、それ、わが家の情景そのまんま。。。道理で! 小型冷蔵庫でも優良機種なら「1時間30ワット台」なのに、そしてわが家の古い冷蔵庫も、記載されている年間消費電力量の数値はそこまで悪くないはずなのに、なぜか「1時間85~95ワット」という狂気の数字がワットチェッカーに表示されるのは、どうやらそうした要素も大きく関係していそうです。(さらに、古い機種だからそもそも省エネ度が低いし、それが経年劣化でさらに性能が下がって…とまァ踏んだり蹴ったり…)


▶ステップ4.比べる~それでも中古や小型の方がエコなのでは!?

さて、電力消費の観点からは、もはや「この古い小型冷蔵庫をこのまま持ち続ける」という選択肢はなさそうです。でも――10人いたら1番目か2番目に疑り深い性格の自分。スッとは納得できません。さらなる疑問が頭をよぎります。

Q.電力だけを見れば「買い替えた方がエコ」かもしれないけれど、製造や廃棄にかかるエネルギーや資源も踏まえれば、トータルでは「中古の方がエコ」な場合もあるのでは?

家電などの「製造から廃棄に至るまで」のトータルの環境負荷を分析する手法を「ライフサイクルアセスメント」(LCA)と言います。いくつか調べた中でとてもわかりやすかったこの記事の内容をざっくりまとめてみましょう。曰く、「家電の製造時のエネルギー負荷は一般的にライフサイクルの負荷の1割程度」と言われており、その中でも冷蔵庫のように常時電力を消費するものは「使用時の負荷の割合が大きい」ため、「近年の技術革新で大幅な省エネが実現し、使用時の負荷が下がった」現状を踏まえると、「新しい冷蔵庫への買い替えは比較的早期であっても負荷の軽減になる」と考えられ、さらに「エネルギー消費以外の資源の枯渇の問題などを考慮に入れた場合」においても、「8~10年経過した冷蔵庫の買い替えが環境負荷の軽減につながるという結果は変わらない」。ということで、消費電力の大きい古い冷蔵庫を持っている方は、まず大体において「買い替えた方がよい」という結論になりそうです。より一般向けに書かれたこの記事にもほぼ同じようなことが書いてありますね。

ただ、ひとつ注意が必要だと思ったのは、このライフサイクルの分析は、思った以上に「本当にややこしい」ということ。よく一般に言われるような、「冷蔵庫は絶対新しい機種に買い替えるべし!」というような単純な結論ではありません。実際に省エネの割合はどのくらいなのか? そして、何年間使用してから買い替えるのか? この辺りの複雑なシナリオの中で計算され、様々な仮定や、資源問題やプラスチック問題をどのくらい深刻なものとして数値化するか、などの条件によって、結果は大きく変動してくるようです。ですから、やはり、企業の販売戦略に乗せられて「安易に新しい機種への買い替えをする」と言うよりは、「8~10年くらいは大切に冷蔵庫を使った上で、省エネのきちんとした機種に買い替えを進めていく」という地に足のついた姿勢が基本スタンスとして求められそうな気がします。

Q.同じ省エネタイプの新しい冷蔵庫であれば、(電力だけを見ると「大型の方がエコ」でも)製造にかかるエネルギーと資源も踏まえれば、トータルでは「小型の方がエコ」な場合もあるのでは?

これに対する答えは、いろいろネット検索した中では見つけることはできませんでした…。「どの小型」と「どの大型」を比べるのかによっても話は違うでしょうし、複雑な比較となることは想像に難くありません。そんな中、自分なりに考えたのは、「物質的には小型冷蔵庫の方がエコかもしれないけれど」、「わが家の現状では小型冷蔵庫の使用は相当な無理を伴っており」、「ギュウギュウ詰めにすると電力消費も増え、食材を大慌てで消費する羽目になり、気分も悪い(←ここ結構重要!)」。つまり、「大型冷蔵庫を買う」と言っても、それは「不必要に大きなものを買おうとしている」わけではなく、「本当に必要なものを買おうとしている」のであって、しかも省エネやフードロス的な観点からは逆にメリットもある。ならばここは……「大型、買っちゃおう!」――ということで、やっと、やっとのことで、決心がついたのでした!


▶ステップ5.決断する!

ついに覚悟が決まりました――「大型の新しい冷蔵庫を買う!」。さて、それでは具体的にどの機種を選べばよいのでしょう? というわけで、最後の難関に突入です。

プラスチックフリー/サステイナブルな素材のものはないか?
この期に及んで、まだ巨大プラの冷蔵庫を買うことにドキドキしてしまう自分です。「木の冷蔵庫なんてあったらいいのにな~、今の時代、そんな先進的なデザインの冷蔵庫もどこかにあるかも!?」と検索してみたら、見つかったのは何と、アンティークの古式ゆかしい氷式冷蔵箱や、おままごとの冷蔵庫(木のおもちゃ)ばかり…。 夢、ついえました。。。(インダストリアルデザイナーの皆様、木の冷蔵庫、作ってください~~) 一方、ステンレスの電気冷蔵庫はいくつか見つかりましたが、表面がステンレスなだけで、中は普通にプラスチック。しかも省エネ効果はイマイチなものが多いようで、「それならしっかり省エネなプラ冷蔵庫を買う方がいいだろう」と結論。

●メーカーは?
次なる検討事項はメーカーです。パナソニック、東芝、三菱電機、日立、シャープといった辺りが主流ですが、はて、どこを選ぶべきか?(あるいはどこでも同じか???) 各社とも、差別化を図ろうと「微凍結パーシャル」とか、「真空チルド」とか、「切れちゃう瞬冷凍」とか、目が点になるようなネーミングの特徴を打ち出していますが、正直、自分はシンプルな冷蔵庫で十分。複雑な機能は使いこなせそうもないし、使いたくもないし、どうでもいいのです。デザインも、どれもドングリの背比べ!(※後日、深澤直人さんデザインのアクアの冷蔵庫の存在を発見。省エネの数値もそれほど悪くなく、値段も高すぎず、「あー事前に知っていたら候補に入れて検討したのに…!!」と悔しく思いました。)
エコの観点から考えたいのは、むしろ各メーカーの「企業としてのエシカル度」です。この辺り、まだまだ不勉強なので自信を持って言えることはあまりないのですが、友人知人に聞きまわったり、ネットで軽くリサーチした限りにおいては、パナソニックの評判が一歩リードしている印象を持ちました。「企業のエシカル通信簿」でも家電部門で5社中トップ(その実際の「意味」はなかなかはかりかねるのですが…)。一方、日立・三菱・東芝については、原発産業への関与の歴史を指摘する声も多々ありますし、旧財閥系はダイベストメントの対象となることもしばしば。ということで、わからないなりに今回は「パナソニックかな…??」と結論。

●肝心の省エネ度は?
省エネ度は公式の年間電力消費量で判断します。実際の電力消費量は、使用条件にかなり左右されるようですが、ほかに判断基準がない以上、素人にできるのは公式値を見比べることだけ。サイズ、価格とのバランスで考えて、今回は500ℓ前後の年間電力消費量250kWh前後のものに照準を合わせることに。あとは、購入後にきちんと左右の隙間を開け、中身をギュウギュウ詰めにしないなど注意を払うことで、なるべく省エネ効果を阻害せずに使用することを意識します。

●販売店は?
安いのは断然ネットです。しかし、ここで最後の波乱が発生。妻が「絶対に地元の電気屋さんで買いたい」と強硬に主張したのです。「はあ!? もうそういう時代じゃないでしょ~?」と自分。たしかにローカル消費や地元経済活性化の重要性はわかるけれど、さすがに…。「一応電気屋さんに値段を確認してみようか?」ということで聞いてみたところ、果たして、ネットよりも5万円も高い。「どう考えてもありえん!」となったのですが、どうしても引かない妻。「地元の電気屋さんなら、故障してもすぐに来てくれる。そういう電気屋さんが地元からなくなったら困るし、私はあの電気屋さんが好きなの! それにネットショッピングって何だか気持ちが悪いの!」と訴えます。再び電気屋さんに相談してみると、「この機種はこれ以上値引きできないけれど、パナソニックの別の機種なら、もう少し安く取り寄せられる」とのこと。調べてみると、年間消費電力量もほとんど変わらず、しかも、設置費用がかからない(=ネットは追加で設置費用がかかることが多い)ことなどを考えると、ほぼネットと同水準となることが判明。晴れて、「地元の電気屋さんで買う」という予想外の快挙が達成されたのでした。


▶<結果>大型冷蔵庫に買い替えてみたら・・・?

長い長い旅路でした。。。もうゲッソリ。ついに晴れがましい大型冷蔵庫がわが家に到着(いつもお世話になっている電気屋さんの搬入なので安心感150%)、わが家の暮らしも新時代に突入です。

さっそくワットチェッカーでチェックしてみると、期待通り、数値が低い!! ハイテクのインバータ制御だかセンサーだかの影響なのか、思った以上にワット数は変動が大きいのですが、少ない時は「6」とか「8」とか。たまに「80」とかに上がることもありますが、大抵は「30以下」くらいを行ったり来たりしています。月の電気料金も一気に1000~1500円くらい下がりました。遥かなる「木村さんへの道」、一歩前進です。

使い始めてみて、当たり前ですが、食材が入る入る! 大きな冷蔵庫のありがたさをかみしめます。やはり、食材を質よく保てる、というのは重要な要素ですね。それでいて、電力消費はミニマム。今のわが家の暮らしのバランスの中では、やはりこれに勝る選択はなかったかな、と感じます。まさかわが家がこんなアメリカの家庭みたいな大きな冷蔵庫を持つことになるとは夢にも思いませんでしたが ―― この冷蔵庫のお陰で、家全体の電力消費にもより意識的になれたと思うと、ありがたさも大切さもひとしお。10年間、大切に使いたいと思います。