完全生分解性の歯ブラシ、ついに登場

待望の完全生分解性の歯ブラシがついに登場、さっそく入手しました。

ハンドルは竹。毛は豚毛。アメリカのGaia Guyというショップのものです。
(輸送エネルギーの問題さえ除けば、日本からも手軽に取り寄せられますよ)

パッケージも斬新!

フタを閉めるときに毛が挟まってしまうのがややビミョーなんですが・・・

値段は送料を含めると1本500~600円くらい。ちょっと高いですが、買えない値段ではありません。何より、今まで存在しなかった完全生分解性ですから、価値はすごく大きいです。


▶「ナイロン毛」VS「動物の毛」

竹歯ブラシはこれからの時代の必携品。成長の早いサステイナブルな素材である竹を使うことで、年間数十億本に及ぶプラスチック歯ブラシの数を減らしていけるとしたら、それはものすごく大きなことです。

ただ、「毛」の部分にはまだすっきりとした解決策はなく、今出ている竹歯ブラシのブランドも、ほぼナイロン毛(なので土に還すときはプライヤーなどで毛を取り除く必要があります)。小耳に挟んだ情報では、耐熱温度の規制などもあって、なかなか生分解性の毛が使いにくいという現状もあるようです。

とにかく、これほど世の流れが「脱プラ!」「竹歯ブラシ!」となっていて、こんなに各社が様々な竹歯ブラシを発売しているというのに、毛の部分はそろいもそろってナイロン毛というのは、何にせよすごい困難があるのだろうと推測されます。
☆この辺のオドロキの現状は過去記事「竹の歯ブラシはどれを買えば?」に詳しく書いていますので、ぜひ合わせてご覧ください。

そんな中! ついに動物の毛を使った歯ブラシの登場です。さっそく使ってみると、おぉ、口当たりが全然違う! 何というか、”自然!”な感じです。

今までプラスチックの毛しか知らなかった我が口が、生まれてはじめて自然の毛を知った・・・そんな新鮮な感覚。「毛が不揃いな感じ」・・・と言うと否定的に聞こえるかもしれませんが、ナイロン毛の工業的な均一さと比べると、本当に自然そのものという磨き心地。まだ慣れませんが、ヘアブラシだって、豚毛のものはプラのものより髪にいいと言いますし、きっと歯ブラシだって! ということで、しばらく使い続けてみてどんな感触や発見があるか、すごくたのしみです。

先日買った国産のMiYO-organic-さんのスリムな歯ブラシに比べるとややゴツイかなぁ…

▶「動物愛護」VS「脱プラ」

ただし、動物の毛は、動物愛護の観点からは賛否両論です。特に欧米は、動物愛護の意識がすごく進んでいるので、意識的な人ほど、動物製品の使用を避けています(いわゆる「ヴィーガン」というやつですね。この言葉、まだまだ日本では一般的でない)。

だから、欧米は脱プラの意識も高く、竹歯ブラシも日本とは段違いに広まっているのに、「動物はNG」ということで、「ナイロン毛やむなし」とする声が多数。これには「なるほどね~!」と思わされます。

動物の毛を使う上で、いちばん好ましくないのは、まず「毛のためだけに動物を殺すこと」。そして、「残酷な育て方や殺し方をする」こと。

残酷な飼育の問題は、「毛」だけでなく、食肉産業全般に蔓延していて、日本でも、あまり知られていないかもしれませんが、牛も、豚も、ニワトリも、一般的にはひどい飼育方法で育てられていると言われます(そのおかげでこんなにもたくさんの肉や卵や牛乳が生産され、みんなが安く豊富に買える――売れ残って捨てるほどにスーパーに並ぶ――ことになるわけですよね…)。うちは菜食主義ではないですが、こういう現状を思うと、やっぱり肉の大量消費に安易に加担すべきではないなぁと強く感じます。

☆この辺りの問題、小学生の子どもたちにもぜひ知っていってもらいたいトピックです。おすすめは『しあわせの牛乳』。身近な牛乳を通して、子どもたちに世界を見る目を広げてもらえる本です。最初の10ページで既に「読めてよかった!」と思う内容の濃さ。若手ジャーナリストさんによる第2回児童文芸ノンフィクション文学賞&第66回産経児童出版文化賞JR賞受賞作品。

このGaia Guyの歯ブラシの豚毛は、直接問い合わせたところ、中国の食肉産業で捨てられる毛の有効利用ということなので、毛のために豚を殺しているわけではありません。というわけで、1番目の点はクリアですが、2番目は・・・中国の食肉産業ですから、推して知るべし、ではありますね。。。(フタを開ければ日本のスーパーの安売りの肉も大差ない可能性もありますが…)。

この辺は本当にむずかしい選択です。プラ汚染+プラ焼却による気候変動を抑えるべく、動物毛を選ぶのか? あるいは、よりエシカルな地球のためにナイロン毛を選んで、プラを使い続けるのか???(←ただ、エシカルのために動物毛を避けるなら、まずは肉食を減らす方が先ですね。。。)


▶大切な原点はやはり・・・

「動物愛護vs脱プラ」、簡単には答えは出ません(どちらもあまりに問題がデカい…)。でも、ここでも思うのは、やはり問題の根本は「大量生産・大量廃棄」であるということ。

プラスチック歯ブラシが作れるようになったのは、わずか100年足らずのことです。それ以前は、歯ブラシは、動物の毛や木の枝だったそう。その頃はきっと、食肉産業も今とは違って、もっともっと自然に近い形で動物が育てられ、と殺されていたのでしょうね。。。

人口も増えて、膨大な数の歯ブラシが生産されるようになった今、すべての歯ブラシを動物の毛に変えようとしたら、一体どれだけの数の動物が犠牲になるのか…(あ、気分悪い…)。

でも、そもそも自然素材である動物の毛を有効活用するのは、人間のまともな営みの一部だったはず。肉食と同じで、命を大切にいただくことで、人間は生かされていたと思うのです。それが不自然な方向に歪んできた現代こそが問題を作り出しているのであって、つくづく、動物愛護の問題というのは、現代ならではの問題なのだと感じます。決して「動物の毛を使うこと」そのものが悪いわけではない。むしろ、生き物に、植物に、地球に、より倫理的に向かい合うことが難しくなってしまった現代の危機を象徴する問題なわけですね。

ということで、豚毛歯ブラシ、より一層、大切に使わなければ、と思います。まずはそこに尽きる。使用後はしっかり拭いて、風通しよく保管し、なるべく長く使う努力をしてみます。ナイロン毛の歯ブラシも今後どんどん進化していきそうな予感があります(そう期待しています)。アンテナを伸ばして、「いちばんしっくり来る歯ブラシ選び」、引き続きたのしんでいきたいなぁと思います。